「エアコンの暖房をつけているのに、急に止まった…」「冷たい風しか出なくて部屋が全然あたたまらない…」
冬場になると、お客さまからこういった相談をよく受けます。実はこの症状、多くのケースで“霜取り運転(デフロスト)”が関係しています。
霜取り運転は壊れているわけではなく、エアコンが自分で凍結を解消するための正常な機能です。ただし、「正常な霜取り」と「異常な状態」を見分けることが大切です。
この記事では、第一種電気工事士として年間100台以上エアコンに関わっている私が、
- 霜取り運転の仕組み
- 霜取り運転が止まらない原因5つ
- 正常か異常かを見分けるポイント
- 自分でできる対処法
- プロやメーカーに相談すべきケース
をわかりやすく解説します。
目次
1. 霜取り運転とは?仕組みをかんたんに解説

エアコンの暖房運転中、外の室外機は外気から熱を取り込む役割をしています。気温が0℃前後まで下がると、室外機の熱交換器に霜(氷)が付きやすくなるため、そのままだと暖房能力が落ちてしまいます。
そこでエアコンは、自分で霜を溶かすために「霜取り運転(デフロスト運転)」を行います。
霜取り運転中によくある症状は次のとおりです。
- 室内機から風が出なくなる、またはぬるい風になる
- 室外機のファンが止まる
- 室外機から白い湯気が出る
- 運転ランプが点滅する機種もある
これらはすべて正常な動きで、通常は5〜15分ほどで霜取り運転が終わり、再び暖房に戻ります。
2. 霜取り運転が止まらない原因5選
しかし、次のような場合は霜取り運転が何度も繰り返されたり、長時間続いてしまうことがあります。
原因1:室外機まわりがふさがれている

霜取り運転が長引く一番多い原因が、室外機まわりの環境不良です。
- 室外機のまわりに雪が積もっている
- 落ち葉やゴミが吸い込み口をふさいでいる
- 物置・自転車・植木鉢などが近くに置かれている
- 壁との距離が極端に狭い
室外機は前後左右から空気を吸って吐き出すため、風の通り道がふさがれていると熱交換がうまくできず、霜が付きやすくなります。
原因2:フィルターや内部の汚れで風量不足になっている

室内機のフィルターにホコリがたまっていると、風量が落ちてエアコン全体の効率が低下します。その結果、霜取りの頻度が増えたり、霜が溶けにくくなったりします。
こんな症状があれば要注意です。
- フィルターを開けるとホコリがびっしりついている
- 風量が弱く感じる
- カビっぽいにおいがする
フィルター掃除はご家庭でも簡単にできるので、まずはここから見直してみてください。
→ 自分でできるエアコンクリーニングの手順はこちら
原因3:エアコンの能力不足(部屋の広さに合っていない)

10畳以上あるLDKに6畳用エアコンを使っているなど、部屋の広さに対してエアコンの能力が足りていない場合も、霜取り運転が増えやすくなります。
- 吹き抜けや階段とつながっているリビング
- 窓が大きく、断熱性が低い部屋
- 北向き・日当たりが悪い部屋
こういった条件だと、エアコンは常にフルパワーで運転し続けることになり、室外機に負荷がかかりやすくなります。
エアコンの畳数と能力の選び方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→ エアコンの畳数・能力(畳数)の選び方はこちら
原因4:外気温や湿度の条件が厳しい地域

日本海側や山間部など、気温0℃前後で湿度も高い地域では、どうしても霜が付きやすくなります。この場合、霜取り運転は正常でも、頻度が多く・時間もやや長めになることがあります。
このケースでは、室外機の周りを整えたり、風よけを設置するだけでも改善する場合があります。
原因5:センサー異常や冷媒ガス不足などの故障

次のような症状がある場合は、内部の故障や冷媒ガス不足が疑われます。
- 20分以上ずっと霜取り運転が続く
- 何度も霜取り運転に入るが、部屋がほとんど暖まらない
- 室外機から異音(ガタガタ音・うなり音)がする
- 運転ランプが点滅し、エラーコードが表示される
この場合は、むやみに自分で分解せず、メーカーやプロの業者に点検を依頼するのが安全です。
3. 正常か異常かを判断するポイント

霜取り運転が正常な範囲かどうかを見分けるために、次のポイントをチェックしてみてください。
正常な霜取り運転の目安
- 1回あたり5〜15分程度で終わる
- 外気温が低い時間帯(早朝・深夜)にだけ発生する
- 霜取り後はしっかり暖房が効く
異常が疑われる状態
- 20分以上たっても暖房に戻らない
- 30分〜1時間に1回以上の頻度で霜取りになる
- いつまでたっても部屋が暖まらない
- エラー表示や異音を伴う
これらに当てはまる場合は、故障や能力不足を疑った方がよいです。
4. 自分でできる改善・対処方法

ここからは、ご家庭でもできる対処法を紹介します。どれも難しい作業ではないので、できる範囲で試してみてください。
① 室外機まわりの障害物を取り除く
- 室外機の前後・左右に物を置かない(目安は30cm以上あける/室外機背面は10cm以上)
- 雪が積もっている場合はスコップなどで除雪する
- 落ち葉・ゴミ・ビニールなどが吸込口に貼り付いていないか確認する
② フィルター掃除をする
フィルターのホコリは、1〜2週間に1回の掃除が理想です。
- エアコンの電源を切る
- カバーを開けてフィルターを取り外す
- 掃除機でホコリを吸い取る
- 汚れがひどい場合は水洗いしてよく乾かす
フィルター掃除の詳しい手順は、こちらの記事でも写真付きで解説しています。
→ 自分でできるエアコンクリーニングの基本手順
③ 暖房の設定を見直す
- 運転モードが「暖房」になっているか
- 設定温度を25〜28℃くらいまで一度上げてみる
- 風量を「自動」または「強」にする
- 風向きをやや下向きに固定する
暖房の設定や使い方については、こちらの記事も参考になります。
→ エアコン暖房の電気代を節約しつつ快適に使うコツ
④ 室外機の下が凍っていないか確認する
室外機の下にたまった水が凍って、氷で排水の道をふさいでいることがあります。氷が厚く張っている場合は、ぬるま湯を少しずつかけて溶かすと改善することもあります。
※熱湯をかけるのはNGです。プラスチックの破損につながることがあります。
5. 霜取り中でも部屋をあたたかく保つコツ

霜取り運転の間はどうしても部屋が冷えやすくなります。少しでも快適に過ごすために、次のポイントも意識してみてください。
- サーキュレーターや扇風機で天井付近の暖気を床付近に循環させる
- 加湿器を使って湿度を40〜60%程度に保つ
- カーテンを閉めて窓からの冷気を抑える
- 玄関や廊下とのドアを閉めて、暖める部屋をしぼる
こうした工夫だけでも、体感温度はかなり変わります。
6. それでも直らないときは故障の可能性も

ここまでの対処をしても、
- いつまでも霜取り運転が終わらない
- 霜取りが終わってもほとんど暖まらない
- 異音・エラーコード・ブレーカーが落ちる
といった症状が続く場合は、冷媒ガス不足や部品故障が考えられます。
また、暖房が効かない原因は霜取りだけとは限りません。総合的な原因については、こちらの記事も参考にしてみてください。
→ エアコン暖房が効かない原因7選と今すぐできる改善策
7. まとめ|霜取りを理解して、ムダなく対処しよう
エアコンの霜取り運転は、冬場に室外機の霜を溶かして性能を保つための大事な機能です。
まずは、
- 霜取り運転の仕組みを知る
- 室外機まわりの環境を整える
- フィルター掃除など基本的なメンテナンスを行う
- 正常な霜取りと異常な状態を見分ける
といったポイントを押さえておくことで、
「壊れたかも…」とむやみに不安にならず、ムダな出費も防ぐことができます。
それでも不安な場合や、ご自身での判断がむずかしい場合は、
メーカーやプロの業者に相談してみてください。あなたのご家庭のエアコンが、この冬も安全・快適に動いてくれるよう、参考になればうれしいです。

